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株式会社ランドスケープ・プラス|LANDSCAPE PLUS LTD

【TOPIC】新年明けましておめでとうございます。         

皆さま、新年明けましておめでとうございます。

新年を迎えまして、私たちランドスケープ・プラスが皆さまと共に目指して参りたい社会像をお伝えしたく、長文となり恐縮ではございますが、新年のご挨拶をさせていただきます。


長引くコロナ禍にあって、公園や河川など身近な自然のあるパブリックスペースに日常の安らぎを求めた方も多かったのではないでしょうか。私たちランドスケープ・プラスも、建物の外で安全で快適に過ごせる空間や、都市の中で自然を感じながら寛げる時間を求める声が大きくなっていることを日々のプロジェクトを通じて実感しています。この動きは、リモートワークの普及によって好きな場所で好きな時間に働くことができるという新たな価値観の発見と密接に関連しているように思います。

今後、これらの社会変容がグローバルに拡大するほど、優れた自然環境を持つローカリティの価値が相対的に高まっていくのではないでしょうか。コロナ禍では、人口密度が高い場所ほど日常活動の制限を受けましたが、その反動として空間や時間の広がりを求める生物的な本能が起動するように思います。かつて、私たちの祖先が安住の場所を求めて大陸を移動し始めた頃のような時代の転換期が再び訪れるように思うのです。

コロナ後の社会では更なるグローバル化の加速により、ローカルの価値が見出されやすい状況が生れてきます。いまこそ、人口減少社会をポジティブに受け入れ、古き良き文化が残る日本の風土を再評価し、ポスト・コロナの社会に相応しい空間と時間の価値を再定義する必要があります。私たちは、身近にある自然の豊かな場所から、大きな社会変容を促す取り組みを発動しなければならないのです。


昨年も多くの打ち合わせがオンラインで進められました。私たちは、空間や時間の新たな価値創造に議論の軸足をおくことで、オンライン特有の誰もが参加しやすい状況を活用した合意形成の実現に取り組んできました。プロジェクトの対象地である「ここ」という場所を拡張することでグローバルに支持されるローカルな価値の発見を促し、「いま」という時間を延伸することで過去と未来をダイナミックにつなげる物語の創作を導くなど、大局的な視点の共有を大切にしながら意志ある形態を構築しようと試みてきました。

コロナ禍のような社会が閉塞した状況だからこそ、空間や時間のスケールを大きく広げながら目の前にある解決すべき課題や、目指すべき目標を関係者と一緒になって考える姿勢に、不確実な未来を覆す力があると考えたのです。

このような志向は、地球温暖化による急速な気候変動や、デジタル化による急激な社会変容という世界共通の課題を解く上でも、私たちに重要な示唆を与えてくれます。コロナの世界的な感染拡大というリスクを目の当たりにしたことで、グローバルな問題にローカルな視点で取り組む、ローカルな課題をグローバルなルールで解決する、といった行政や企業の動きが飛躍的に広がりました。その一方で、それぞれの組織が持つ風土や文化に馴染みのないグローバルなルールに則って事業の課題や目標を設定し、好き嫌いや流行り廃りの議論の中で形態が産み落とされるケースが未だ散見されることに強い危機感を抱いています。一般解によるアプローチでは本質的な課題解決に至らず、場所の特性に応じた特殊解によるデザインプロセスに取り組まない限りローカルな価値創造にはつながらないと考えるからです。

それぞれの地域には、人間が生きていく上で適切な空間的スケールがあり、安定した物質循環が機能するための時間的スケールがあります。それらの規模を超えた都市開発や経済活動の結果が、コロナウィルスの発生につながったことは論を待ちません。私たちはいま、空間や時間に対する価値観の大きな転換期に立たされているのです。


欧米諸国では「地球」と「世界」この二つの概念を束ねる「グローバル」という言葉を発見し、地球を一つの単位として捉える視点や発想から、SDGsに象徴される人類共通の目標や世界共通のデジタルプラットフォームを構築してきました。その一方で、百数十年前まで鎖国をしていた日本では、「グローバル」という言葉の捉え方や意識の持ち方が諸外国とは異なるはずで、小さな「石庭」に大きな「宇宙」を感じるような文化的特性を持っている日本から世界に発信できるたくさんのアイディアがあるのではないかと感じています。それぞれの土地が持つ多様な地域性、つまりは「ローカル」な視点から地球や世界の在りようを捉え直すことで、自分が生きている場所も世界の一部だと思えるグローバルな感性が育つように思うのです。

グローバルなルールであるSDGsのウェディングケーキモデルでは「経済、社会、環境」この3要素のバランスが重要だと説いています。この指標に日本のランドスケープアーキテクトが座右の銘とする「景観10年、風景100年、風土1000年」というローカルな指標を掛け合せてみると、経済と景観の形成に10年、社会と風景の創成に100年、環境と風土の醸成に1000年という時間軸が浮かび上がってきます。長きに渡り地域の人々が大切に守りつなげてきた「環境」が土台としてあるから、多様性のある「社会」が維持され、持続性のある「経済」が可能となる。グローバルなルールとローカル独自の文化を掛け合せてみると、地域に根差した空間や時間のスケールを多くの人々と共有することが可能になるのです。


地域に根差した空間や時間からは、故郷を懐かしむようなその土地独自の郷愁が感じられます。鎮守の森のような地域の人々が大切に守り続けてきた場所や、小学校の校歌で郷土の誇りとして歌われる山や川の風景などがその代表例として挙げられるでしょう。山域や流域という視点で自分が生きている空間を捉え、荘厳な森を構成する木々に尊い時間を感じられるような世界の捉え方から地域の未来を考えてみる。20世紀の社会が失ってしまった空間や時間を、物理的にも精神的にも取り戻せるようなパブリックスペースの出現を、21世紀の社会は求めているのではないでしょうか。

誰もが自分の場所だと思える場所から、次代を担う新たな制度や仕組みが生れてくるように思います。それはインターネットでつながるバーチャルな空間かも知れませんし、ノスタルジーを感じられるフィジカルな空間かも知れません。確かなことは、いつの時代も多様性のある場所から次代を担う優れた遺伝子が生れてくるという事実です。地球環境が変動する時代はマジョリティが排除され、次代の環境に適応したマイノリティから新たな才能を持つ生命体が生れます。多様性のある社会を維持するためには、マイノリティを許容する寛容さが重要であり、社会の寛容さが支える多様性は、豊かな環境下にこそ育まれるのです。

ポスト・コロナの空間や時間には、地球上の生きものとして、誰にも迷惑をかけず生きられるかどうかの知性が私たちに求められるはずです。そして、その答えは私たちの身近な自然の中にあるに違いありません。


2022年が、次代を担うパブリックスペースを創り出せる希望の一年となりますように。

そして、皆さまが健康にご活躍される1年となりますことを、心より祈念申し上げます。


本年も、どうぞよろしくお願いいたします。




株式会社ランドスケープ・プラス

代表取締役 平賀達也

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