top of page
株式会社ランドスケープ・プラス|LANDSCAPE PLUS LTD

【TOPIC】新年明けましておめでとうございます。         

皆さま、新年明けましておめでとうございます。

コロナウィルスの終息が見えない中、人々の生命や生活の安全を守るために、いまも最前線で働いておられる方々がいます。そのような中、私たちランドスケープ・プラスは、何をもってコロナ社会に対処できるのであろうか、昨年はそのような自問を繰り返す毎日でした。

新年にあたり、私たちが皆さまと共に目指していきたいと考える社会像をお伝えしたく、長文となり恐縮ではございますが、新年のご挨拶をさせていただきます。

私たちの職種であるランドスケープアーキテクトとは、もともと産業革命後の経済活動に伴う都市公害によって引き起こされた健康問題(感染症や呼吸疾患等)を自然の力で調停する役割として生まれた職能です。どのようにして都市に自然を取り戻し、快適性と安全性が両立した社会をつくっていくか。「経済資本」を基盤にするのではなく、「自然環境がもたらす豊かさ」や「自然災害に対する強靭さ」等の「自然資本」という観点から土地の価値を考え、地域社会の持続性に取り組むことが私たちの仕事です。

高度成長期のような安定した経済成長の時代であれば「駅からの距離による利便性」や「キャッシュフロー重視による効率性」といった短期的な「経済資本」ベースの価値観によって世の中が動きます。しかし日本では、2008年に人口のピークを迎え、その後には東日本大震災や新型コロナウィルスといった自然に起因した災害によって、人間の予測した社会が成立しなくなる局面に立たされています。そうした先行きの見通せない状況変化や、実体経済と金融経済が乖離するなか、人間の生命基盤である自然の振る舞いに対して、私たちは敏感にならざるを得なくなっています。そういう中で、長期的視点で人間と自然の関係性を見つめ直そうという社会的な動きは必然の流れといえるでしょう。

戦後75年間で、高密度化した日本の都市からは風の流れや土の広がりが失われていきました。都市に残された自然資源を再生し、つなげていくことで居心地のよい空間、すなわち快適性と安全性が両立された空間を生み出していくことが大切です。ランドスケープ・プラスは地域の環境条件などを踏まえたうえで、風や土を地域社会の重要な資本だと捉え、ランドスケープの計画や設計に取り組んできました。背景には、現代社会に「風土」という文化を取り戻したいという思いがあります。

2020年の春にコロナ禍の中で竣工した北青山三丁目まちづくりプロジェクト「ののあおやま」では、周辺にある明治神宮等の大規模緑地に倣った森を創り出し、都市に風や土のつながりを取り戻す自然回帰の街づくりを実現しました。或いは同時期に竣工した立飛ホールディングスによる「GREEN SPRINGS」では、事業全体のマスターデザインを担当し、地域の経済資本と自然資本の融合という目標を掲げることで、地域循環型の新たな街づくりモデルを体現できたのではないかと考えています。

グローバルな経済資本を志向する社会においては、ローカルな自然資本に軸足をおいた私たちの取り組みはあまり注目を浴びることはありませんでした。皮肉にも自然災害やパンデミックが増加する中、私たちが志向してきた社会像に対して、徐々に人々の関心が高まっていることを感じています。その要因の一つに、どのプロジェクトにおいても、私たちが社会変動を促す新たな仕組みづくりに必ず取り組んでいることが、上げられるのではないかと分析しています。

新たな開発やエリアマネジメントをスタートする目的を、地域が大切に守ってきた自然資本を物理的にも精神的にも社会とつなげ直す機会として位置づければ、事業を応援したい、一緒に活動したいという関係人口は自ずから増えていくのではないでしょうか。

私たちは、単に居心地のよい空間をつくるだけではなく、デザインと仕組みは常に一体であるべきだと考えます。私たちが携わったプロジェクトの多くでは、完成後も生態系や植生を維持するためのアドバイザリー等の役割を担いつつ持続性のある施設運営に関与し続け、自然資本を備えた不動産の価値向上に取り組んでいます。

ESG投資に象徴されるように、社会貢献や環境配慮を行わない企業には投資を行わないというスタンスが世界的な潮流になりつつある中、単年度の収益・集客といった短期的視点ではなく、長期的尺度で持続性のある価値を生み出す街づくりの手法が、ウィズコロナ社会の主流となることでしょう。

火山国の日本では、アスファルトやコンクリートで覆われた都市の表面も一皮めくればいまも豊かな土壌が残っています。光合成を促し、水を涵養し、ウィルスも含めた微生物の活動基盤となる土壌。日本では、豊かな土壌がある場所で、優れた文化を育んできた歴史があります。都市の中で土が再び呼吸をし始めると、街や人が再び元気を取り戻せるのではないでしょうか。

私たちは、自然回帰を促すランドスケープのデザインを通じて、社会に新たな価値を実装していきたいと考えています。そして、私たちが日々摂取する命の糧やエネルギーがどこからきて、どこに捨てられているのかを知りたいと思える社会の仕組みをデザインすることも、私たちが取り組むべき重要な課題だと考えています。豊かな自然の存在が身近に感じられる社会の実現にむけて、私たちの挑戦はこれからも続きます。

2021年が、皆さまと共に、新しい時代の生命基盤を創り出せる希望の一年となりますように。

そして、皆さまが健康にご活躍される1年となりますことを、心より祈念申し上げます。

本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

株式会社ランドスケープ・プラス

代表取締役 平賀達也

bottom of page