図書館の内と外を地域の豊かな自然でつなぐ
多良岳を背景に、大村湾を望む緩やかな斜面地に建てられた図書館のランドスケープです。県庁所在地以外に建つ施設としては日本初となる「県立・市立の一体型図書館」であり、設計にあたっては長崎県らしさと大村市らしさの共存が求められました。建築計画は、大村湾を引用した湾型の大きな屋根のもとに、多良岳の斜面地に見立てた段状のフロアを展開し、長崎エリアの地勢的特徴である山と海の物理的な近密さ、あるいは精神的な親密さという地域特性を建築に内在させています。この内部空間とつながるランドスケープは、どのようなデザインであるべきか。それが私たちに求められた設計のテーマでした。
ランドスケープ計画は、大屋根に降る大量の雨を広場の植栽地に供給し、大村湾に至る斜面地へ涵養を促す微地形をグリーンインフラとして構築することを提案しました。山と海をつなぐ大きな水循環のシステムを、図書館の内と外を物理的かつ精神的につなぐ仕組みとして取り入れたのです。植栽は全て大村湾流域圏の圃場で育てられた材料を、石積みや舗装の骨材は地場産の森山石を採用し、地元職人の丁寧な手仕事によって懐かしくも新しい風景が出来上がりました。
日本初の公園デザイナーであり、明治から大正にかけて造園技術の第一人者であった長岡安平は、ここ大村市で生まれ育ちました。長岡は地域の自然特性を生かす設計手法で知られています。私たちもまた、先達の教えを守りながら地域の自然とつながれたことに感謝をしつつ、この地で学んだ地域の価値を空間化する設計手法を様々な場所で応用していきたいと考えています。
事業名 長崎県立図書館・大村市立図書館ミライON図書館
所在地 長崎県大村市
用 途 図書館
事業主 長崎県、大村市
設 計 ランドスケープデザイン:ランドスケープ・プラス
建築:株式会社佐藤総合計画
照明:ICE都市環境照明
サイン:氏デザイン
規 模 敷地面積/16,223.52㎡ 建築面積/4,873.95㎡
施 工 戸田建設
竣 工 2019年
受 賞 2020年:グッドデザイン賞
2021年:日本建設業連合会 BCS賞