「みんなの公園」が「わたしの公園」になる日まで
佐賀県のへそにある江北町。その江北町の中心につくられた「みんなの公園」からは、地域のシンボルである御岳山の姿を地続きの風景として眺めることができます。
かつて長崎街道の宿場町として、戦後は石炭の町として栄えてきた江北町は、人口流出や石炭鉱害などの厳しい時代を乗り越え、いまは佐賀市のベッドタウンとして子育て世代の流入が増えています。「みんなの公園」に期待されたのは、自然に寄り添う暮らしをしてきた旧住民と、都市的な生活を志向する新住民が交流できる新たな居場所づくりでした。
計画地は、郊外特有のロードサイド型の大型商業施設や新興住宅地に囲まれており、古くより江北町の象徴として親しまれてきた「御岳山」の存在が町の中に埋没していました。私たちは公園をあえてオープンにせず、公園の外周を盛土や樹木で包み込み、大きな屋根のもとで江北町が誇る自然の風景を、住民みんなが再発見できる居場所づくりを提案しました。地域の自然資本を基盤に据えた公園づくりにこそ、新旧の世代をつなぐ力があると考えたからです。この提案には工期などの懸念事項もありましたが、住民説明会で公園と「御岳山」がつながる一枚の絵を見た地元の方から「これが私の原風景だ、ありがとう」との言葉をいただいた瞬間に、関係者全員の気持ちが一つになりました。地域の人々が大切に守りつないできた風景には、人々の心を一つに束ねる力があるのです。
私たちは、「みんなの公園」が新旧住民の交流拠点となり地域に愛着をもつきっかけになってほしいと願っています。そして、この場所を訪れる一人一人が、ここが「わたしの公園」と思える日がくることを。地域の課題が自分ごとになったら、江北町はもっともっといい町になるはずです。その日が訪れるまで、私たちもこの公園の未来を見守りつづけたいと思います。
事業名 江北町みんなの公園整備工事
所在地 佐賀県江北町
用 途 公園、地域交流施設
事業主 江北町
設 計 ランドスケープデザイン:ランドスケープ・プラス
建築:オープン・エー
照明:トミタ・ライティングデザイン・オフィス
規 模 敷地面積:5464.39㎡ 建築面積:340.05㎡
施 工 峰組、山崎造園
竣 工 2019年