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株式会社ランドスケープ・プラス|LANDSCAPE PLUS LTD

【TOPIC】新年明けましておめでとうございます。         


皆さま、新年明けましておめでとうございます。

Landscape+代表の平賀です。

コロナ禍の終息が見えないまま新しい年を迎えることになりましたが、昨年は今後の世界動向や国内情勢に大きな影響を与える出来事が数多くありました。ロシア軍のウクライナ侵攻により、いまや米中対立の更なる緊張が世界秩序の瓦解を促しています。日本国内でも台湾有事や北朝鮮暴発の危機が浮上する中、政府は防衛費の増額や原発の最大活用を掲げるなど、世界の変化が私たちの身近な生活にも不穏な影を落とそうとしています。世界の動向と地域の意識が乖離する中、ランドスケープアーキテクトがこの閉塞した社会状況に対して何ができるのか。いま私が考えていることをランドスケープ・プラスの代表として、また今年11月に東京で国際会議を開催するランドスケープアーキテクト連盟(Japan Landscape Architect Union / JLAU)の実行委員長の立場からお伝えし、2023年の展望を皆さんとともに考えてみたいと思います。年始より長文のご挨拶となり大変恐縮ですが、ご一読いただければ幸いです。


国際連合の専門機関であるユネスコから唯一の認定を受けた世界規模の団体である国際ランドスケープアーキテクト連盟(International Federation of Landscape Architect / IFLA)と共に、ランドスケープアーキテクト連盟が2023年11月に気候変動時代の展望と戦略を語り合う国際会議を東京の二子玉川ライズで開催します。私自身は冒頭で述べたように実行委員長の立場で国際会議の運営に携わっていますが、地域の身近な自然を設計や活動の対象領域とするランドスケープアーキテクトが、どのような開催目的や課題意識を持てば国際社会や地域社会の問題解決に貢献できるかを長らく考えてきました。国際会議の準備活動を通じて、バーチャルなネットワーク網が世界と地域の空間や時間を縮めたと感じる一方で、リアルな場所について踏み込んだ議論を重ねる中、日本ではそれぞれの国や地域が持つ固有の文化に対する理解の深度がまだまだ浅いことに気づかされました。EUのような国際連携を重要視する社会では、移民や難民の受け入れを行う際に、地域のランドスケープアーキテクトが調整役となって他国の文化的固有性を認めつつ、両国間の文化的共通性を見出すことで、多様性と包摂性をあわせ持つコミュニティ基盤の創出を試みています。人口減少が進行する日本においても、早晩海外からの労働力に頼らざるを得ない状況が迫る中、多様性や包摂性を備えた社会資本の整備は喫緊の課題だと言えるのではないでしょうか。


私は常々ランドスケープをデザインする上で、グローバルに支持されるローカルな価値づくりが大切であると考えてきました。文化圏の異なるランドスケープアーキテクトとの対話を通じて、ローカルな価値とは「地域の風土を生かした場所」のことであり、グローバルに支持される対象とは「社会の仕組みを支える地域コミュニティ」の存在に他ならないことを実感しました。つまり「ローカルな価値を持つ地域の風土」とは文化的固有性であり、「グローバルに支持される場所を生かす仕組み」とは人種や性別を問わず、誰もが自分の場所だと思えるような文化的共通性を目指す姿勢のことだと理解しています。地域資本である風土や文化を生かして地域社会の持続性や多様性に貢献することを設計や活動の対象領域とするランドスケープアーキテクトが、異なる文明・文化・国民間の対話を活動基盤に据えるユネスコから認定された理由がグローバルとローカル双方の固有性と共通性を理解することで見えてきたのです。これらの活動を通じて、多様性を持った文化の価値を尊重することが、ユネスコの掲げる3原則「人類の平和、人権の尊重、貧困の削減」につながること。また、これらの目標がユネスコの関連機関である国際連合によりSDGs(持続可能な発展目標)として掲げられていることも私たちの活動を後押ししてくれるのではないかと考えます。


SDGsの良さは、国際連合のような志の高い大きな団体が掲げるグローバルルールがあることで、日本国内で増えているエリアマネジメント(エリマネ)組織のような志を共にする小さなまちづくり団体が独自のローカルルールを掲げる際に、グローバルな課題とローカルな課題を掛け合せた地域独自の制度や仕組みを考案できるところにあります。エリマネ組織には、地域のまちづくりを通じて地域の課題解決や経済発展を期待されるわけですが、活動をスタートする上で重要になるのは活動拠点となる場所の見極めです。活動の成否を分けるのは「合意形成を図りやすい場所」を選定できるかに尽きるのですが、対象となる活動拠点が新たにつくられる場所であれ、もともとある場所であれ、「地域の風土に根差した場所」であることが大切です。なぜならば、地域の人々が誇りに思える場所、つまりは子供たちの未来に残していくべき価値のある場所こそが、エリマネ活動の合意形成を図る上で大切な評価軸になるからです。


まちづくりにおいて、地域の風土に根差した場所を活動拠点にすることの重要性とともに、まちづくりの活動に地域独自の仕組みを実装することの重要性についても触れておきます。ここでは「コモンズ」という考え方を提唱したいと思います。コモンズとは本来、地域の資源を地域の人々で保全することを目的として生まれた仕組みであり、地域の人々の意志で地域の資源を持続する有効な手法のことです。戦前の日本においては「結」や「組」など地域の共同体が所有する「共有地」を指していましたが、高度成長期を経て人口減少社会に移行する日本において、「共有地=コモンズ」とは持続可能な社会を維持するコミュニティの在り方を示唆しており、成熟社会を志向する欧米では、コモンズを「価値観を共有できる地域社会のシステム」として位置づけ、地域の合意形成を促す場所としての意味合いを持たせています。パブリックスペースを活用したウォーカブルなまちづくりといったキーワードが国や自治体から発信されている背景には、最先端都市におけるまちづくりの潮流を紹介するだけでなく、地域の課題を独自の仕組みで解決できるヒントを紹介することで自律した社会の構築を促しているのです。


日本の高度成長期を支えてきた様々な制度や仕組みが機能しづらくなっているいま、まちづくりの根幹を担う都市計画の諸制度についても、容積割増や補助金ありきの行政指導に従う計画や設計、あるいはマネジメントを行うだけでは世界の未来を牽引するような地域の未来を描くことは不可能です。その一方で、民主主義国家にあっては様々な法律や条例は全て民意によって決められることが社会の大前提となっています。つまり価値観を共有できる地域社会のシステムとは、市民発意による市民合意のもとで行われるまちづくりのことであり、これらの活動母体となるのが「地域の風土を生かした場所」から生まれる「価値観を共有できる地域社会のシステム」を持ったエリマネ組織のようなまちづくり団体のことなのです。成熟社会にふさわしい新たな法律や条例を整備していくためには、国や度道府県レベルで大胆な改正を行うことは難しく、区市町村やまちレベルで新たな制度や仕組みを発明することが、グローバルに支持されるローカルな価値を生み出しやすい理由がここにあります。


ここからは、日本が世界の先進国に先駆けて人口減少社会を迎える中、成熟社会への移行期にあることを前提にしつつ、私たちランドスケープ・プラスが携わってきた民間事業者による都市再生プロジェクトや、まちづくり団体による地域再生プロジェクトを紹介したいと思います。どちらのプロジェクトも、ウォーカブルなまちづくりの実現に向けて、徒歩圏域という空間の捉え方や、歩行速度という時間の感覚を意識してプロジェクトを進めてきました。そして、まちを歩きながら風の流れや地形の変化を意識してもらえるようなデザインを提案しています。全身で風を感じたり足の裏で大地を感じられる環境を提供すれば、見慣れた風景のその先に大きな空間や時間のつながりを感じてもらえると考えるからです。私たちの先人は、このような感覚を風土と名づけてその価値を尊びました。ウォーカブルなまちづくりを行う上で、私たちが大切にしたいと考える設計思想の一つです。


まずは、1994年に竣工した東京都の恵比寿ガーデンプレイスにおいて、私たちランドスケープ・プラスが5期に及ぶ屋外環境の再生マスタープランを作成し、その第1期となる空間の設計監理を行ったプロジェクトをご紹介します。このプロジェクトは、恵比寿ガーデンプレイスを管理運営する民間事業者さんから段階的に屋外環境の改善を図る提案をデザインプロポーザル形式で求められたプロジェクトでした。大型複合開発の黎明期につくられた恵比寿ガーデンプレイスも、その後、都内に幾多の複合開発が乱立する中で、自らのポジショニングを位置づけ直す必要がありました。加えて商業棟の最大テナントが撤退を表明したことを受け、屋内外を一体利用できるオフィスと商業がミックスした用途変更や、地域住民に寛いでもらえる広場機能の追加など、ウィズコロナ社会に相応しい屋外環境の実現を求められました。

私たちランドスケープ・プラスは丘の上に立地する環境の優位性と恵比寿が持つ文化の多様性に着目し、自然とのつながりを求める人間の本能をグリーンやアートで喚起するようなランドスケープのデザインを提案しました。その上で、この地でビール工場を創業するきっかけとなった三田上水の面影や、環境性能の高い自然教育園との緑のつながりを敷地全体に散りばめ、それまでは西洋のクラシックな造形が最大の特徴であった恵比寿ガーデンプレイスに「地域の風土を生かした場所」を段階的に実装できるランドスケープのマスタープランを提案しました。この実現に向けて、私たちの提案を事業者の皆さん自身の言葉で理解してもらうために、プロジェクトの初期段階に関連する全ての部署からワークショップに参加いただき、5期に渡るプロジェクトを同じ志や信念をもって貫き通すためのデザインコンセプトブックをつくりました。これが私たちにとっての「価値観を共有できるシステム」であり、2022年に完成した第1期事業については、就業者や来街者や限らず地元住民も含めて、コンセプトブックに掲げる「誰もが自分の場所だと思えるような居場所づくり」を多様性のあるグリーンを組み込んだ屋外ファニチャによって実現しています。地域性を纏ったこれらのアクションが、必ずやこのまちの価値を持続させる基盤づくりにつながると考えています。


ランドスケープ・プラス – YouTube

「恵比寿ガーデンプレイス グリーンプロジェクト」



次にご紹介するのは、私たちランドスケープ・プラスがマスターデザイナーとして携わっている群馬県前橋市の「馬場川通りアーバンデザインプロジェクト」です。東京一極集中による地方都市衰退の象徴ともいわれたシャッター通り商店街で有名な中心市街地の通りを、市内に拠点をおく起業家有志「太陽の会」の寄付金で改修事業を行う地域再生プロジェクトであり、2023年11月の完成に向けて昨年末より本格的な工事がスタートしました。もともとは前橋城内と城下町の結節点にある象徴的な通りであり、舟運によって発展してきた水路の拠点でもありました。高度成長期にまちなかの通りが人から車のための場所へと変化する中、道路沿いの用水路に柵が張り巡らされます。私たちランドスケープ・プラスは水と共にあった前橋の文化をまちなかに取り戻すべく、歩道と用水路を隔てる柵を撤去し、地域の風土を生かしたウォーカブルな場所を再生したいと考えました。

私たちの提案は、資金提供者である太陽の会からは満場一致で承認を得たのですが、市の管理者からは安全面に問題ありとの指摘を受けて協議が難航します。加えて、馬場川通りは、用水路(河川)、遊歩道(公園)、車道(道路)が一体的に整備されており、市の管理管轄が分かれていることで協議は更に混迷を極めました。このデザインを実現するために奮闘して下さったのが本プロジェクトの発注者である前橋デザインコミッション(MDC)のメンバーであり、市の窓口として様々な課題解決に取り組んで下ったのが市街地整備課のメンバーです。MDCは都市再生法人格を持つまちづくり組織であり、前橋市のまちづくりパートナーとして前橋を良くしたいと願う地元有志や地域団体の橋渡し役を担いつつ、具体的なプロジェクトを推進する役割を担っています。最終的に安全面の問題については、市街地整備課が市の管理窓口となること、完成後の日常管理はMDCが行うことで私たちのデザイン提案にゴーサインが出ることになります。この間、私たちも地域の風土を生かしたウォーカブルな場所づくりというコンセプトを堅持しつつ、市の管理者に対し幾多のデザイン変更案を提示し、市の議員や地元市民に対してもデザイン内容の説明や参考事例の見学を行うなど、時間をかけて丁寧な合意形成に努めてきました。完成まではまだ1年の時間がありますが、これほど心意気を持って取り組めるプロジェクトを私は経験したことがないですし、これほど未来への希望を感じるプロジェクトを私は知りません。地域を象徴する場所の再生に、地元有志の皆さんからいただいた資金が私たちのデザインを信じて投資されることや、本プロジェクトにかけるまちづくり団体やまちづくり行政の地域再生にかける熱い想いに触れる中、前述した「ローカルな価値を持つ地域の風土」を生かした価値観を共有するシステムとしての「コモンズ」とは、まさにこのような仕組みから生まれてくることを実感しています。前橋では2拠点就業の候補地として外資系企業の誘致に力を入れていますが、いままさに「グローバルに支持される場所を生かす仕組み」の成果が、私たちに試されているのです。


ランドスケープ・プラス – YouTube

「馬場川通りアーバンデザインプロジェクト」

そもそもランドスケープアーキテクトとは、産業革命後の都市公害によって引き起こされた感染症や呼吸疾患などの健康被害を自然の力で調停する役割として生まれた職能です。どのようにして都市に自然を取り戻し、安全性と快適性が両立した環境をつくりだしていくか。自然資本という視点から土地の価値を考え、その持続性に取り組むのが私たちの仕事でした。その一方で、現代の国家制度は、全ての土地を特定の組織や個人が所有していることを前提にあらゆる制度や仕組みが作られています。そして、地球人口は産業革命後に急激な増加傾向に転じ、1950年に25億人、2050年にはおよそ100億人に推移する見込みです。地球上の限りある資源を巡って国家や地域間に格差が生まれ、憎しみによる分断が土地の境界に深い傷跡を残すいま、土地の所有や共有の仕組みに新たな視点を取り入れる必要があります。


私たちランドスケープアーキテクトは、土地そのものを国土や流域といった大きな空間で捉え、土地の行く末を地球史や地誌学といった長い時間で考える視点を持ち合わせています。鎮守の森や街の水路などに可能性を感じるのは、そこには未だ分断されていない、人間が自然との営みの中で創り出した生々しい土地の力を感じ取ることが出来るからです。

このような志向は、その土地が持つ自然の力を信じていないと生まれてこない感情であるし、そういう土地とつながりたい、つまりは人間の引いた境界を消し去りたいと願う感情の発露が、ランドスケープのデザインに大きな力を与えてくれます。そうして獲得されたコモンズのような場所には、目を凝らせば境界を消そうと試みた意志ある人たちの痕跡を見て取ることができる。まちの中にそのようなパブリックスペースが生れてくると、誰にとっても世界はもっと住みやすい場所になるのではないでしょうか。

誰もが自分の場所だと思える土地から、新しい制度や仕組みが生まれてくるような気がしています。それはネットでつながったバーチャルな空間かも知れないし、境界のないフィジカルな空間かも知れない。私たちの世代が実現できなければ、次の世代につなげていけばいい。そんなメッセージを込めて、今年は東京から世界に向けて新たな合意形成の仕組みを発信したいと思います。


私たちランドスケープ・プラスの活動とともに、ランドスケープアーキテクト連盟が主催する国際会議にもぜひご注目いただければ幸いです。


本年も、どうぞよろしくお願いいたします。




株式会社ランドスケープ・プラス

代表取締役 平賀 達也

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