【EVENT】二子玉川ライズで「第7回カワラノギク観察会」を開催しました。
ルーフガーデン5階の原っぱ広場で、秋の恒例企画「カワラノギク観察会」を開催しました。
カワラノギクは河川中流域の轢河岸に生息するキク科の植物であり、環境省のレッドデータブックにて絶滅危惧Ⅱ類に位置付けられる日本固有種です。
その昔、秋の多摩川河川敷ではカワラノギクが一面に咲き、真っ白な雲のような風景が広がっていたといいます。しかし、コンクリートのための骨材需要増加に伴う河岸の礫の大量採取、上流のダム建設による状況変化や下水処理水、肥料等の流入による富栄養化といった生息環境の急激な変化により個体数が減り、現在、多摩川流域の野生環境では姿を消してしまうに至ります。二子玉川ライズのエコミュージアムでは、このような希少なカワラノギクの保全エリアをせせらぎのそばに設置し、来館者が観察できる場をつくりだしています。
イベントはカワラノギク研究の第一人者である倉本先生のレクチャーから始まります。秋晴れの原っぱ広場に椅子とテーブルを並べ、カワラノギクを取り巻く状況の変化や、その不思議な生活史、花粉を媒介するハナアブとの共生関係など、専門的な内容を分かりやすく説明頂きました。また、小さなお子様向けには、エコミュージアムの植栽管理を担う箱根植木から、写真を使った易しいレクチャーが実施されました。オリエンテーションの後は、4つの班に分かれてカワラノギクの観察と調査、昆虫採集、二子玉川ライズで採れた自然素材を材料とした生きものクラフトに取り組みました。今年の開花個体はあまり多くありませんでしたが、開花を待つロゼット状態や開花後の枯れ状態など、カワラノギクの色々な様子を見ることができました。多様な気づきと同時に、来年以降に繋がる貴重なデータを得られた観察会となりました。
2024年11月現在、IUCN(国際自然保護連合)によると、絶滅危惧種は世界で4万6千種に上り、我が国においても環境省によって3,772種が絶滅危惧種に指定されています。文化の基盤である固有の動植物の喪失は、私たちの感性や個性の喪失に他なりません。エコミュージアムでの環境教育イベントが、失われつつある生きものとその生息環境に目を向けるきっかけになれば幸いです。
保全エリアでのカワラノギク観察
倉本先生によるレクチャー
子ども向けレクチャー
左:カワラノギクとその標本 右:生きものクラフト